飲食店のFL比率とは|計算方法と目安、下げるときの考え方
更新日 2026-08-22(公開日 2026-08-18)
飲食店の経営でよく使われるFL比率は、食材費(Food)と人件費(Labor)の合計を売上で割った数字です。売上のうち、どれだけが材料と人に出ていったかを示すもので、店の利益が残るかどうかを大きく左右します。ただし、この数字は「何パーセント以下なら安全」と一律に言えるものではなく、業態によって適正な水準が変わります。この記事では、計算の仕方、業態ごとに目安が変わる理由、毎月どう出すか、そして比率が上がったときに何から確認すればよいかを整理します。
FL比率の計算方法
FL比率は、その月の食材費と人件費を足し、売上で割って求めます。たとえば売上が300万円、食材費が90万円、人件費が90万円であれば、合計180万円を300万円で割って60パーセントになります。計算そのものは単純ですが、何を食材費と人件費に含めるかで数字が変わるため、そこを毎月そろえることが重要です。
食材費は、その月に仕入れた金額をそのまま使う方法と、実際に使った分(期首の在庫+仕入-期末の在庫)で計算する方法があります。厳密なのは後者ですが、毎月棚卸をするのは負担が大きいため、仕入額で代用している店も多くあります。どちらでも構いませんが、月によって計算方法を変えると推移が比較できなくなるため、一度決めたら同じ方法を続けてください。
人件費は、アルバイトの給与だけでなく社員の給与も含めます。経営者自身の給与を含めるかどうかは考え方が分かれますが、個人店の場合は含めずに計算し、別途生活費として把握しておくほうが実態を掴みやすいことが多いようです。ここも一度決めたら固定します。
- •FL比率=(食材費+人件費)÷ 売上
- •食材費は「その月の仕入額」か「実際に使った分(期首在庫+仕入-期末在庫)」のいずれか
- •厳密なのは後者だが、毎月の棚卸が負担なら仕入額で代用してもよい
- •人件費はアルバイトと社員の給与。経営者自身の給与を含めるかは方針を決めて固定する
- •最も大切なのは、毎月同じ計算方法を続けること(変えると推移が比較できない)
「60パーセント以下」を鵜呑みにしない
FL比率の目安として60パーセント前後という数字がよく挙げられます。これは一つの参考にはなりますが、業態によって構造が違うため、そのまま自店に当てはめると判断を誤ることがあります。
たとえば、良い食材を使って単価を上げる業態では、食材費の比率が高くても客単価が高いため利益が残る場合があります。逆に、低単価で回転数を上げる業態では、食材費を抑えても人手が多く必要になり、人件費の比率が上がります。同じFL比率60パーセントでも、内訳がF40・L20の店とF25・L35の店では、打つべき手がまったく違います。
また、家賃の水準によっても許容できるFL比率は変わります。家賃が売上の5パーセントで済む店と、15パーセントかかる店では、同じFL比率でも最終的に残る利益が違うためです。目安の数字を見るときは、自店の家賃比率も合わせて考えてください。
- •60パーセントという目安は参考値であり、業態によって適正水準は変わる
- •同じFL比率でも、FとLの内訳が違えば打つべき手も違う
- •高単価・低回転の業態はFが高くても成立することがある
- •低単価・高回転の業態はFを抑えてもLが上がりやすい
- •家賃の比率によって許容できるFL比率も変わる
毎月どう出すか(続けられる手順)
FL比率は、月に一度出せば十分です。ただし、月末になってから1か月分の数字を集めようとすると手間がかかり、結局計算しないまま終わりがちです。日々の記録が残っていれば、月末の作業は集計するだけになります。
必要なのは、日別の売上、仕入の金額、その月の人件費の3つです。売上はレジの日次集計、仕入は納品書や仕入先からの請求、人件費は勤怠の記録から出せます。これらが月の途中で溜まっていく形になっていれば、月末は合計するだけで済みます。
計算した数字は、必ず前月・前々月と並べて見てください。1か月分だけを見ても、それが高いのか低いのかは判断できません。3か月ぶんを並べると、季節要因なのか、何かが悪化しているのかが見分けやすくなります。
- •必要な数字は3つ=日別の売上・仕入金額・その月の人件費
- •日々の記録が溜まる形にしておけば、月末は合計するだけで済む
- •月に一度でよい(毎日計算する必要はない)
- •単月では判断できないため、必ず前月・前々月と並べて見る
- •3か月ぶんを並べると、季節要因か悪化かを見分けやすい
比率が上がったときに確認する順番
FL比率が前月より上がっていたとき、闇雲に食材を切り詰めたり人を減らしたりすると、品質やサービスが落ちて客数が減り、かえって比率が悪化することがあります。まずは、FとLのどちらが上がったのかを分けて見るところから始めてください。
食材費(F)が上がっている場合、考えられるのは、仕入価格の値上がり、ロスの増加、原価の高いメニューが多く出たこと、提供量のぶれの4つです。仕入価格は納品書を前月と比べればすぐ分かります。ロスは廃棄の記録がないと見えないため、気になる時期だけでも記録してみると原因が絞れます。
人件費(L)が上がっている場合は、売上に対して人が多かった時間帯がなかったかを確認します。日別・時間帯別の売上と、そのときのシフトを並べると、暇な時間に人が多かったかが見えます。ただし、人を減らすとサービスが落ちて客足に影響することもあるため、まずは時間帯の配置を調整するところから検討するほうが安全です。
なお、従業員の労働時間や配置に関する取り扱いは労働基準法の定めがあります。シフトの削減や勤務時間の変更を行う場合は、労働条件の変更にあたることがあるため、必要に応じて社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
- •まずFとLのどちらが上がったのかを分けて見る
- •Fが上がった場合=仕入価格の値上がり/ロス/原価の高いメニューが多く出た/提供量のぶれ
- •仕入価格は納品書を前月と比べればすぐ分かる
- •Lが上がった場合=日別・時間帯別の売上とシフトを並べて、暇な時間に人が多くなかったかを見る
- •人員の削減より、まず時間帯の配置調整から検討する
- •労働時間や配置の変更は労働条件に関わるため、必要に応じて社会保険労務士に相談する
原価率だけを見て判断しない
食材費の比率(原価率)だけを追いかけると、判断を誤ることがあります。原価率を下げる最も簡単な方法は、量を減らすか安い食材に変えることですが、それによって満足度が下がれば再来店が減り、売上そのものが落ちます。売上が落ちれば固定費の比率が上がるため、利益はかえって減ることになります。
逆に、原価をかけた看板メニューが集客につながっている場合、その料理単体の原価率が高くても、店全体では成立していることがあります。原価率は料理単位ではなく店全体で、しかも売上や客数の推移と一緒に見るのが実務的です。
同じ理由で、FL比率も単独では判断材料になりません。売上、客数、客単価、そしてFL比率を並べて見ると、「客数が落ちて売上が下がった結果、比率が上がった」のか「売上は変わらないのに費用が増えた」のかを区別できます。この2つは原因も打ち手もまったく違います。
- •原価率を下げるだけなら量を減らせばよいが、満足度が落ちれば売上が減る
- •売上が減ると固定費の比率が上がり、利益はかえって減ることがある
- •看板メニューは単体の原価率が高くても、集客に効いていれば店全体で成立する
- •FL比率は単独で見ず、売上・客数・客単価と並べて見る
- •「客数減による比率上昇」と「費用増による比率上昇」は原因も打ち手も違う
数字を毎月見る仕組みにする
FL比率が役に立つのは、毎月同じ方法で出して推移を追えているときだけです。思い出したときに一度計算しても、それが高いのか低いのかを判断する材料がありません。逆に言えば、数字さえ毎月出ていれば、多少計算方法が粗くても十分に使えます。
AXpress飲食は、レシートの撮影で記録した経費と、入力または取り込んだ売上から、食材費と人件費の比率を自動で集計するサービスです。日別の売上、仕入、シフトの人件費が同じ場所に集まるため、月末に別々の資料を集める作業がなくなります。表示される数字は集計結果であり、経営判断そのものを示すものではありません。1か月の無料期間があるので、実際の1か月で試してみてください。
- •毎月同じ方法で出して推移を追えていることが前提
- •計算方法が多少粗くても、続いていれば判断材料になる
- •売上・仕入・人件費が同じ場所に集まると、月末に資料を集める作業がなくなる
- •集計された数字は判断の材料であり、経営判断そのものではない
FL比率とFLR比率の違い
FL比率に家賃(Rent)を加えたものを、FLR比率と呼ぶことがあります。家賃は毎月ほぼ固定で発生するため、これを含めて見ると、お店の固定的な負担まで含めた姿がつかめます。
FL比率だけを見ていると、家賃の重い立地で「食材費も人件費も抑えているのに手元に残らない」という状態の説明がつきません。家賃を含めて見ることで、その原因が見えます。
どちらを使うかは目的によります。日々の運営の改善を見るならFL比率、出店や移転の判断をするならFLR比率、という使い分けが一般的です。
原価率を下げる前に確認すること
原価率が高いとき、まず仕入先の価格交渉やメニューの値上げを考えがちですが、その前に確認したほうがよいことがあります。
実際には、廃棄が多い、仕込みの量が需要と合っていない、原価の高いメニューばかり出ている、といった運営側の要因が大きいことが少なくありません。仕入価格を数パーセント下げるより、廃棄を減らすほうが効くこともあります。
メニューごとの原価が分かると、どのメニューが利益に貢献しているかが見えます。ただしメニュー別の原価の集計は手間がかかるため、まずは全体の原価率を毎月見る習慣をつけることから始めるのが現実的です。
- •廃棄の量(仕込みすぎていないか)
- •出ているメニューの構成(原価の高いものに偏っていないか)
- •仕入の単価の変動(同じ食材で値上がりしていないか)
- •棚卸をしているか(在庫を数えないと本当の原価は出ません)
よくある質問
- Q. FL比率は何パーセント以下を目指せばよいですか?
- A. 一般に60パーセント前後が目安として語られますが、適正な水準は業態によって変わります。高単価・低回転の業態では食材費の比率が高くても成立することがあり、低単価・高回転の業態では食材費を抑えても人件費が上がりやすい構造です。また、家賃の比率によっても許容できる水準は変わります。他店の数字と単純に比べるのではなく、自店の数字を毎月同じ方法で計算し、その推移を見ることをおすすめします。
- Q. 食材費は仕入額と実際に使った分のどちらで計算すべきですか?
- A. 厳密なのは実際に使った分(期首の在庫+仕入-期末の在庫)ですが、毎月棚卸をする負担が大きいため、仕入額で代用している店も多くあります。どちらの方法でも構いませんが、月によって計算方法を変えると推移が比較できなくなるため、一度決めたら同じ方法を続けてください。仕入額で計算する場合は、月末にまとめ買いをした月だけ数字が跳ねる点に注意が必要です。
- Q. 経営者自身の給与は人件費に含めますか?
- A. 考え方が分かれる部分です。個人店の場合は含めずに計算し、生活費として別に把握しておくほうが店の実態を掴みやすいことが多いようです。法人化していて役員報酬が固定されている場合は、含めて計算するほうが実態に近くなります。どちらを選んでも構いませんが、途中で変えると推移が比較できなくなるため、方針を決めたら固定してください。
- Q. FL比率が上がったとき、まず何をすればよいですか?
- A. 食材費と人件費のどちらが上がったのかを分けて見ることから始めてください。食材費が上がっている場合は、仕入価格の値上がり・ロスの増加・原価の高いメニューが多く出た・提供量のぶれ、が主な原因です。人件費が上がっている場合は、日別や時間帯別の売上とシフトを並べて、暇な時間帯に人が多くなかったかを確認します。原因の候補を1つに絞って翌月に手を打ち、結果を見るという進め方が現実的です。
- Q. 原価率を下げれば利益は増えますか?
- A. 必ずしもそうとは限りません。原価率を下げる簡単な方法は量を減らすか安い食材に変えることですが、それによって満足度が下がれば再来店が減り、売上そのものが落ちる可能性があります。売上が減ると家賃などの固定費の比率が上がるため、利益はかえって減ることもあります。原価率は料理単位ではなく店全体で、売上や客数の推移と一緒に見て判断してください。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としています。税務・労務の個別の判断については、税理士・社会保険労務士などの専門家にご確認ください。制度・数値は変更される場合があります。