飲食店のシフトの作り方|人件費から逆算する手順
更新日 2026-09-08(公開日 2026-08-22)
シフトは、必要な人数をそろえることと、人件費を予算に収めることの両方を同時に満たさなければなりません。どちらか一方だけを見て組むと、人手が足りない日ができるか、月末に人件費が膨らみます。そして多くの店では、組むこと自体よりも、希望を集めて待ち、食い違いを直す時間のほうが長くなっています。この記事では、作る順番、必要な人数の見込み方、人件費の枠からの逆算、希望の集め方と締切、急な欠員への備え、共有と変更の伝え方までを順に整理します。なお、労働時間や休憩、賃金の個別の判断は社会保険労務士の領分です。本記事は組み方の考え方を扱うもので、労務に関する相談や手続きの代行を行うものではありません。
シフトは「作る順番」でほとんど決まる
シフト作りが長引く店は、たいてい人を先に当てはめています。誰がいつ入れるかから始めると、必要な人数が足りているのか、人件費が枠に収まっているのかを、組み終わってからしか確認できません。そこで足りない、あるいは超えていると分かれば、また最初から組み直すことになります。時間がかかっているのは、組むのが難しいからではなく、確認が最後に来ているからです。
おすすめの順番は、売上の見込みを立てる、必要な人の時間数を出す、曜日と時間帯に枠を置く、集めた希望を枠に入れる、埋まらない枠と超過した人件費を調整する、の五つです。前の工程が決まらないうちに次へ進まないこと。遠回りに見えますが、やり直しが減るぶん、結果として毎月かかる時間は短くなります。
- •手順1:その月の売上の見込みを立てる
- •手順2:必要な人の時間数(人時)を出す
- •手順3:曜日と時間帯に必要な枠を置く
- •手順4:集めた希望を枠に入れる
- •手順5:埋まらない枠と、はみ出した人件費を調整する
- •前の工程が決まる前に、次の工程へ進まない
曜日と時間帯で、必要な人数は変わる
同じ一週間でも、必要な人数は日によって違います。平日の昼と金曜の夜を同じ人数で回している店は、片方で人が余り、もう片方で足りていないことがほとんどです。まず一週間を曜日と時間帯のマス目に分け、そのマスごとに何人必要かを書き出してください。人ではなく枠を先に置く、というのがここでの作業です。
ホールとキッチンは必ず分けて出します。忙しさの山が同じとは限らないためです。キッチンは開店前から動きはじめ、来店が始まる前に山が来ることがある一方、ホールは客が入ってから山が来ます。ひとつの数字にまとめてしまうと、どちらかに合わせた人数になり、もう一方で過不足が出ます。
- •一週間を曜日×時間帯のマス目に分ける
- •マスごとに必要な人数を書き出す
- •ホールとキッチンは別々に出す
- •開店直後・ピーク・閉店前で、山と谷を見る
- •大人数の予約が入る日は、通常の曜日の傾向と分けて考える
必要な人数は、過去の同じ曜日の売上と客数から見込む
必要な人数の根拠になるのは、記憶ではなく記録です。直近の数週間について、同じ曜日の売上と客数を並べてみてください。第一週の火曜と第三週の火曜が近い数字であれば、その曜日はその水準で見込めます。逆に、同じ曜日なのに数字が大きくばらついているなら、そのばらつきを起こしている要素が別にあります。
見込みを押し上げる要素と、下げる要素も一緒に書き出します。連休の前日、近隣の行事、給料日の後、天候、月初と月末。去年の同じ月に何が起きたかを見ておくと、今年も同じ理由で動く日が見つかります。予約が入っている日は、通常の曜日の傾向とは別に、予約の人数を積み上げて考えてください。
- •直近数週間の、同じ曜日の売上と客数を並べる
- •ばらつきが大きい曜日は、原因になっている要素を探す
- •連休の前日、近隣の行事、給料日の後などを書き出す
- •去年の同じ月に起きたことを見ておく
- •予約が入っている日は、通常の傾向とは別に積み上げる
人件費の枠を先に決めて、そこから逆算する
売上の見込みが立ったら、そこから人件費の枠を決めます。売上の何割までを人件費に充てるかを決め、金額に直しておく。ここを先にやらずに組みはじめると、合計が出るのは組み終わったあとになり、超えていた場合は全部を組み直すことになります。枠が先、配置は後、という順番を崩さないでください。
人件費率やFL比率の考え方、人件費に何をどこまで含めるかは別の記事で詳しく扱っています。ここでは、月の人件費の上限額をひとつ決めておく、とだけ押さえてください。時給は人によって違うので、同じ時間数でも金額は変わります。時間帯によって賃金の設定が異なる店もあり、その具体的な取り扱いについては労働基準監督署や社会保険労務士にご確認ください。
- •売上の見込み×決めた割合=その月の人件費の枠
- •枠は金額で持つ(時間数だけで管理しない)
- •時給が違う人がいると、同じ時間数でも金額が変わる
- •組んだあとに、時間数と金額の両方で確認する
- •枠を超えたとき、どのマスから削るかを先に決めておく
- •賃金の具体的な取り扱いは労働基準監督署や社会保険労務士へ
人時売上高という物差しで、枠と配置を検算する
枠と配置が釣り合っているかを見る物差しに、人時売上高があります。売上高を総労働時間で割った数字で、一人が一時間働いていくらの売上を作ったかを表します。金額ではなく時間で割るため、時給の違いに左右されず、店の回り方そのものが見えるのが利点です。
月の合計だけでなく、曜日別や時間帯別で出すと差がはっきりします。ただし、数字が低いマスは、人が多いのか、そもそも客が少ないのかで意味がまったく違います。低いからすぐ人を減らすのではなく、そのマスで何が起きているかを確かめ、次の月に何を変えるかを決める材料として使ってください。
- •人時売上高=売上高 ÷ 総労働時間
- •時給の違いに影響されないので、店の回り方が見える
- •曜日別・時間帯別で出すと、どこに差があるかが分かる
- •低いマスは、人が多いのか客が少ないのかを分けて見る
- •直すのは一度にひとつのマスだけ。翌月に結果を見る
ピークと仕込みは、別の欄で人数を持つ
必要な人数を客数だけで決めると、営業時間の外にある作業が抜け落ちます。開店前の仕込みと発注、閉店後のレジ締めと清掃、翌日の準備。ここは売上が立っていない時間なので、人数の計算からこぼれやすく、それでいて人件費にはそのまま乗ります。営業中だけを見ていると、この部分が視界から外れます。
仕込みは、客数の山とは別の理由で増えます。翌日に予約が集中していれば、前日の仕込みが増える。行事の前や連休前も同じです。ピーク用の人数と仕込み用の人数を別の欄で持ち、それぞれ必要な時間数を出しておくと、忙しい日の前日に手が足りない、という事態を避けられます。
- •開店前:仕込み・発注・清掃・釣銭の準備
- •閉店後:レジ締め・清掃・翌日の準備・記録の入力
- •ピーク用と仕込み用で、欄を分けて人数を持つ
- •翌日に予約が多い日は、前日の仕込みが増える
- •売上が立たない時間なので、人件費にはそのまま乗る
希望の集め方と、締切の決め方
シフト作りの時間の多くは、組むことではなく、希望を集めて待つことに使われています。そして、口頭で受けた希望は必ず漏れます。言った本人は伝えたつもりでいて、受けた側は忘れる。あとから食い違いが出れば、組み直しと気まずさの両方が発生し、次の月から希望を言いにくい空気にもなります。
同じ場所に、同じ形式で、締切までに出してもらう。この三つだけで、集める時間はかなり短くなります。締切を決めていない店は、出ていない人に催促することすらできません。締切から公開までの日数も先に決め、毎月同じ日程で回してください。日程が固定されると、出す側も忘れなくなります。
- •口頭で受けない(形に残る方法にひとつへ集約する)
- •提出先をひとつにする(複数の連絡手段に散らさない)
- •締切日を決めて、毎月同じ日にする
- •締切の翌日に、出ていない人へまとめて催促する
- •締切から公開までの日数も、先に決めておく
- •確定後の交代は本人同士で完結させず、必ず店に通す
急な欠員が出たときの決め方を、先に決めておく
欠員は必ず出ます。出たときに毎回その場で考えていると、連絡が行き違い、結局オーナーが自分で入ることになります。先に決めておくのは三つです。誰にどの順番で声をかけるか。何時までに決まらなければ人数を減らして回すか。人数が減った日は、営業の内容をどう変えるか。この三つを紙に書いておくだけで、当日の判断がなくなります。
声をかける順番は、勤務の続き具合や本人の予定を踏まえて決めます。頼みやすいという理由で同じ人にばかり声をかけると、その人が辞める側に回ります。誰に何回頼んだかを記録に残し、偏りを見てください。代わりに入ってもらう際の労働時間の扱いに不安がある場合は、労働基準監督署や社会保険労務士にご確認ください。
- •声をかける順番を、あらかじめ決めておく
- •何時までに決まらなければ人数を減らすかを決めておく
- •人数が減った日の回し方(品書きを絞る等)を決めておく
- •同じ人にばかり頼まない。記録に残して偏りを見る
- •労働時間の扱いに不安があれば労働基準監督署や社会保険労務士へ
新しく人が入った月の組み方
新しく人が入った月を、いつもと同じ人数で組むと現場が回りません。教える側の手が新人に取られるため、頭数は同じでも、実際に動ける手は減っているからです。新人の時間数と、教える人の時間数を別で見込んでおくと、月の途中で足りないことに気づいて慌てる、という状況を避けられます。
この月は人件費が一時的に上がります。上がること自体は避けようがないので、上がる前提で枠を作り、翌月と比べるときはこの月を分けて見てください。あわせて、教える順番を先に書き出しておくと、その日に立っている人によって教える内容が変わり、覚えが進まない、という状態を防げます。
- •新人の時間数と、教える人の時間数を別で見込む
- •頭数が同じでも、実際に動ける手は減っている
- •その月の人件費は、上がる前提で枠を作る
- •翌月と数字を比べるときは、この月を分けて見る
- •教える順番を書き出し、日によって変えない
共有の仕方と、変更の伝え方
組み終わったら、全員が同じものを見ている状態を作ります。紙を貼るだけだと、休みの人は次に出勤するまで見られません。スマホで写真を送る方法も、後から変更したときに古い写真が手元に残り、どれが最新なのか分からなくなります。最新版の置き場所をひとつに決める、というのが基本の形です。
変更が出たときは、変わった箇所と、いつ変わったかを一緒に伝えます。差し替えたものを黙って置き直すと、前の版を見ていた人は気づけません。誰が了解したかまで残しておくと、当日になっての食い違いが減ります。確定前の下書きと、確定後のものを区別して扱うことも忘れないでください。
- •最新版の置き場所を、ひとつに決める
- •写真での共有は、古い版が手元に残りやすい
- •変更は、変わった箇所と変更日を添えて伝える
- •了解したかどうかを、確認できる形にする
- •確定前の下書きと、確定後のものを区別する
毎月同じ手順にして、かかる時間を短くする
ここまでの手順は、毎月同じ順番でやることに意味があります。月ごとにやり方が変わると、前の月と比べられず、どこで時間がかかっているのかも分かりません。売上の見込み、必要な時間数、枠、希望、調整。この五つを同じ場所に置き、同じ順番で回すことが、いちばん確実な短縮になります。
AXpress飲食では、集めた希望と曜日ごとの必要人数をもとに、AIがシフトの下書きを作ります。人件費の見込みも同時に計算されるため、決めた枠に収まっているかをその場で確認できます。出てくるのは下書きで、確定するのはご自身の操作です。労働時間や休憩、個別の事情に関する判断は含まれないため、必要な場合は労働基準監督署や社会保険労務士にご確認ください。
- •毎月同じ順番でやる(やり方を月ごとに変えない)
- •AIが作るのは下書き。内容を確認して確定するのは人
- •確定したシフトから人件費が集計され、FL原価として見られる
- •予約管理とAIシフトは、スタンダード以上のプランの機能
- •給与計算や勤怠の打刻の機能はない
- •労働時間や休憩の個別の判断は労働基準監督署や社会保険労務士へ
よくある質問
- Q. シフトはどの順番で作るのが速いですか?
- A. 売上の見込みを立てる、必要な人の時間数を出す、曜日と時間帯に枠を置く、集めた希望を枠に入れる、埋まらない枠と超過した人件費を調整する、の順番です。人を先に当てはめると、足りているか、枠に収まっているかを組み終わってからしか確認できず、そこで問題が見つかれば最初から組み直しになります。遠回りに見えても、確認を先に持ってくるほうが、毎月かかる時間は短くなります。
- Q. 必要な人数はどうやって決めればよいですか?
- A. 直近数週間の、同じ曜日の売上と客数を並べるところから始めます。曜日と時間帯のマス目に分け、マスごとに何人必要かを書き出してください。ホールとキッチンは忙しさの山が違うので、必ず別々に出します。連休の前日や近隣の行事、給料日の後といった、見込みを押し上げる要素も書き出しておきます。予約が入っている日は、通常の曜日の傾向とは別に積み上げて考えてください。
- Q. 人件費はどうやって枠に収めますか?
- A. 売上の見込みに、人件費に充てると決めた割合を掛け、月の上限額を金額で先に決めます。組み終わってから合計を出すと、超えていた場合に全部を組み直すことになるためです。時給は人によって違うので、時間数だけでなく金額でも確認してください。人件費率やFL比率の考え方、人件費に何を含めるかは、人件費率の記事で詳しく扱っています。賃金の具体的な取り扱いは労働基準監督署や社会保険労務士にご確認ください。
- Q. シフトの希望はどう集めるとよいですか?
- A. 同じ場所に、同じ形式で、締切までに出してもらう。この三つを決めるだけで、集める時間はかなり短くなります。口頭で受けた希望は必ず漏れます。言った本人は伝えたつもりでいて、受けた側は忘れるため、後から食い違いが出て組み直しになります。締切を決めていない店は、出ていない人に催促することもできません。締切から公開までの日数も決めて、毎月同じ日程で回してください。
- Q. 急に休みが出たときは、どうすればよいですか?
- A. その場で考えるのではなく、決め方を先に決めておきます。誰にどの順番で声をかけるか、何時までに決まらなければ人数を減らして回すか、人数が減った日は営業の内容をどう変えるか、の三つです。頼みやすいという理由で同じ人にばかり声をかけると、その人が辞める側に回るので、誰に何回頼んだかを記録に残してください。労働時間の扱いに不安がある場合は、労働基準監督署や社会保険労務士にご確認ください。
- Q. AXpress飲食のAIシフトは、どこまでやってくれますか?
- A. 集めた希望と曜日ごとの必要人数をもとに、AIがシフトの下書きを作ります。人件費の見込みも同時に計算されるので、決めた枠に収まっているかをその場で確認できます。ただし出てくるのは下書きで、内容を確認して確定するのはご自身の操作です。労働時間や休憩、個別の事情に関する判断は含まれません。給与計算や勤怠の打刻の機能はありません。なお、予約管理とAIシフトはスタンダード以上のプランの機能です。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としています。税務・労務の個別の判断については、税理士・社会保険労務士などの専門家にご確認ください。制度・数値は変更される場合があります。