個人店の飲食店経理のやり方|毎月やることと、続けられる仕組みの作り方
更新日 2026-08-22(公開日 2026-08-18)
飲食店の経理は、店を閉めたあとの疲れた時間にやることになるため、後回しになりやすい作業です。レシートが袋に溜まり、月末に数時間かけてまとめて処理する、という店は少なくありません。ただ、経理が滞ると困るのは税務申告のときだけではなく、今月が儲かっているのかどうかが分からないまま営業を続けることになる点です。この記事では、簿記の知識がない前提で、個人経営の飲食店が毎月やることを日次・週次・月次に分けて整理し、続けられる形にするための工夫をまとめます。
飲食店の経理でやることを3つの時間軸に分ける
経理を「月末にまとめてやる大仕事」と考えると、どうしても後回しになります。実際には、毎日やるべきごく短い作業と、週に一度でよい作業、月に一度でよい作業に分かれます。分けて考えるだけで、1回あたりの負担はかなり小さくなります。
毎日やるのは、その日の売上を記録することと、レシートを1か所に入れることの2つだけです。仕分けや入力まで毎日やろうとすると続きません。週に一度、溜まったレシートを分類し、月に一度、集計して数字を確認するという流れにすると、1回の作業時間が短くなり習慣にしやすくなります。
- •毎日(3分):その日の売上を記録する/レシートを決まった1か所に入れる
- •毎週(15分):溜まったレシートを分類して記録する/現金の残高を確認する
- •毎月(30分):売上と経費を集計する/原価率と人件費率を確認する/通帳と突き合わせる
- •年に1回:確定申告のために年間の資料をまとめる(税理士に依頼している場合は引き渡す)
- •分けて考えるだけで1回の負担が小さくなり、月末にまとめてやるより結果的に早く終わる
レシート・領収書の溜め方と分け方
経理でいちばん時間を取られるのがレシートの処理です。ポイントは、集める段階で分けておくことです。財布やレジ横に混ざった状態で溜めてしまうと、あとで1枚ずつ内容を思い出しながら仕分けることになり、これが最も時間のかかる作業になります。
実務的には、仕入(食材)、消耗品、水道光熱費、その他という程度のざっくりした分類で十分です。細かく分けようとすると続かないため、まずは4つ程度の箱や封筒を用意し、買い物から帰った時点で入れる場所を決めておきます。この一手間があるだけで、週末の処理時間が大きく変わります。
紙のレシートは感熱紙で印字が消えることがあるため、写真で残しておくと安心です。撮影して記録するアプリを使う場合は、撮った時点で分類まで済ませておくと、あとの作業が要らなくなります。なお、帳簿と証憑の保存期間は事業形態や申告方法によって異なるため、具体的な保存年数は税務署または顧問税理士にご確認ください。
- •集める段階で分ける(仕入・消耗品・水道光熱費・その他の4つ程度で十分)
- •細かく分類しようとすると続かない。最初は粗くてよい
- •感熱紙のレシートは印字が消えるため、写真で残しておくと安心
- •撮影時に分類まで済ませると、あとの入力作業がなくなる
- •保存期間は事業形態や申告方法で異なるため、税務署または顧問税理士に確認する
売上の記録は「日別」で残す
売上は月の合計だけでなく、日別で残しておくことをおすすめします。理由は2つあります。1つは、曜日や天候による波が見えるようになり、仕入や人員の判断材料になること。もう1つは、あとから「先月のこの日はいくらだったか」を確認できることです。
記録する項目は、営業日・売上金額・客数の3つがあれば最低限成り立ちます。余裕があれば、現金と現金以外の決済を分けて記録しておくと、月末に現金を合わせるときに役立ちます。消費税の扱いについては、店内飲食と持ち帰りで税率が異なるため、両方を扱っている店では分けて記録しておくと、あとで整理し直す手間がなくなります。
レジから日別の集計が出せる場合は、その数字をそのまま使えば入力の手間はほとんどかかりません。締め作業のときに出るレシートを撮っておく、あるいは日次の集計データを取り込む形にすると、手入力そのものをなくせます。
- •最低限の項目=営業日・売上金額・客数
- •現金と現金以外の決済を分けて記録すると、現金合わせが楽になる
- •店内飲食と持ち帰りの両方を扱う店は、税率ごとに分けて記録しておく
- •レジの日別集計が出せるなら、その数字をそのまま使う(手入力を増やさない)
- •日別で残しておくと、曜日や天候の波が見えて仕入・人員の判断に使える
現金を合わせる(レジ現金と帳簿の突き合わせ)
個人店で意外と多いのが、レジの現金と記録が合わなくなることです。原因の多くは、店の現金から小口の買い物をしたり、釣銭を補充したりした記録が残っていないことにあります。金額の大小にかかわらず、店のお金が動いたら記録する、という原則を守ると合わなくなりません。
週に一度、レジの現金を数えて記録上の残高と照らし合わせてください。差が出た場合、その週のどこかに記録漏れがあります。週単位なら遡って思い出せますが、月単位になると原因を特定するのが難しくなります。
また、事業用の支払いと個人の生活費が同じ財布から出ていると、あとで分けるのが困難になります。可能であれば事業用の口座と現金を分けておくと、経理の手間は大きく減ります。
- •店のお金が動いたら金額の大小にかかわらず記録する(小口の買い物・釣銭の補充も)
- •週に一度、レジの現金を数えて記録と照らし合わせる
- •差が出たらその週のどこかに漏れがある。月単位にすると原因が追えなくなる
- •事業用と個人用の財布・口座を分けておくと、あとの手間が大きく減る
月末に確認する数字(原価率と人件費率)
経理は税務申告のためだけの作業ではありません。月に一度、集計した数字から自店の状態を確認することで、翌月の判断材料になります。飲食店でよく見られるのが、食材費(Food)と人件費(Labor)を売上で割った比率です。
この比率は業態によって適正な水準が変わります。一般に60パーセント前後が目安として語られることが多いものの、原価をかけて単価を上げる業態と、回転で稼ぐ業態では構造が違うため、他店の数字と単純に比べても意味がありません。重要なのは、自店の数字を毎月同じ方法で計算し、その推移を見ることです。
前月より比率が上がっている場合、食材の値上がり、仕込みのロス、人員配置の過剰などが考えられます。原因の見当がついたら、翌月に1つだけ手を打って結果を見る、という進め方が現実的です。一度に複数を変えると、どれが効いたのか分からなくなります。
- •食材費と人件費を売上で割った比率を毎月同じ方法で計算する
- •適正水準は業態によって違う。他店の数字と単純比較しない
- •重要なのは絶対値ではなく、自店の推移(前月と比べてどうか)
- •比率が上がったら、原因の候補を1つに絞って翌月に手を打つ
- •一度に複数を変えると、どれが効いたのか判断できなくなる
税理士に渡す前にやっておくこと
税理士に記帳や申告を依頼している場合でも、手元の資料が整理されているかどうかで、やり取りの回数と時間が変わります。渡す前に整えておくと、確認のための往復が減ります。
具体的には、月ごとにレシートがまとまっていること、売上の記録が日別で残っていること、通帳の入出金と手元の記録が一致していること、この3つが揃っていれば、たいていの確認はスムーズに進みます。逆に、レシートが年間分まとめて袋に入っている状態だと、仕分けから始めることになり、その分の作業が費用に跳ね返ることもあります。
会計ソフトを使っている場合は、その形式で書き出したデータを渡せるかを事前に確認しておくとよいでしょう。データで渡せると、紙のやり取りが減り、修正が発生したときの手戻りも小さくなります。
- •月ごとにレシートがまとまっている
- •売上の記録が日別で残っている
- •通帳の入出金と手元の記録が一致している
- •この3つが揃っていれば確認の往復が減る
- •データで渡せる形式かを事前に確認しておくと、紙のやり取りと手戻りが減る
経理が続かなくなる原因と、その対策
経理が止まる理由はほぼ決まっています。最も多いのが、1回の作業が重すぎることです。月末に1か月分をまとめて処理しようとすると数時間かかり、その負担を思い出すと翌月はさらに後回しになります。溜めるほど重くなるので、悪循環に入ります。
次に多いのが、分類で迷って手が止まることです。「この支払いはどの科目か」と考え込むと、そこで作業が終わってしまいます。判断に迷うものは「その他」に入れて先に進み、あとで税理士に確認するという運用にすると止まりません。完璧に分類することより、記録が途切れないことのほうが大切です。
対策としては、作業のタイミングを固定するのが有効です。たとえば毎週日曜の閉店後の15分と決めてしまうと、判断の負荷がなくなります。「時間があるときにやる」は、実際にはやらないのと同じ結果になりがちです。
- •1回の作業を重くしない(溜めるほど心理的な負担が増えて悪循環になる)
- •分類に迷ったら「その他」に入れて先に進み、あとで確認する
- •完璧な分類より、記録が途切れないことを優先する
- •作業のタイミングを固定する(毎週日曜の閉店後15分など)
- •「時間があるときにやる」は、やらないのと同じ結果になりやすい
手間を減らす道具の選び方
経理の負担を下げる方法は、大きく分けて2つあります。人に任せるか、道具で自動化するかです。個人店の場合、記帳代行まで依頼すると費用がかかるため、まずは道具で入力そのものを減らすほうが現実的です。
選ぶときの基準は、店で使う場面を想像して決めてください。事務所に座って操作する前提のものは、閉店後の疲れた状態では続かないことがあります。撮るだけで内容が読み取られるか、スマートフォンだけで完結するか、迷わず使えるかを見ると、実際に続けられるかどうかが判断しやすくなります。
AXpress飲食は、レシートを撮影するとAIが日付・店名・金額・勘定科目の候補を読み取り、確認して確定する形で経費を記録できるサービスです。売上と合わせて食材費・人件費の比率も自動で集計されます。読み取った内容はあくまで候補で、最終的な確定はご自身の操作で行う設計です。税務相談や申告の代行は行いません。1か月の無料期間があるので、実際のレシートで試してみてください。
- •個人店はまず「入力そのものを減らす」方向が現実的(記帳代行は費用がかかる)
- •閉店後の疲れた状態でも使えるかを基準にする
- •撮るだけで読み取れるか、スマートフォンだけで完結するかを確認する
- •AIが読み取った内容は候補であり、確定は必ず自分の操作で行う形が安全
- •税務上の判断が必要な部分は税理士に相談する(ソフトは書類と記録の道具)
青色申告と白色申告のどちらを選ぶか
個人でお店をやっている場合、確定申告の方法を選ぶことになります。帳簿の付け方の手間と、受けられる控除の大きさが変わります。
一般には、複式簿記で記帳し、必要な書類をそろえて期限内に申告することで、より大きな控除を受けられる仕組みになっています。ただし記帳の負担は増えます。
選び方は、お店の売上規模や、記帳にかけられる時間、税理士に依頼しているかによって変わります。どちらが有利かの判断は税務の領域になるため、顧問の税理士にご相談ください。当サービスは記録と集計を支援するもので、税務の判断や申告の代行は行いません。
レシートと領収書の保存(電子で残す場合の注意)
紙のレシートを撮影して電子で保存する場合、保存の仕方について定めがあります。撮ってすぐ捨てるのではなく、どのような形で残せばよいかを先に確認してください。
実務では、撮影した画像とあわせて、日付・取引先・金額が検索できる状態にしておくことが求められます。撮るだけで終わらせず、その三つが後から探せるかを基準にすると分かりやすくなります。
保存の要件は改正されることがあります。最新の取り扱いは国税庁の公表資料か、顧問の税理士にご確認ください。
- •日付・取引先・金額で後から探せる状態にすること
- •画像が読み取れる状態であること
- •要件は改正されることがあるため、最新の情報を確認すること
毎日五分で終わらせる形にする
経理が続かなくなる最大の原因は、まとめてやろうとすることです。一か月ぶんのレシートが箱にたまると、片付けるのに半日かかります。半日は取れないので、また先送りになります。
逆に、その日のうちに撮っておけば一日あたり数分で終わります。閉店後のレジ締めのついでに、その日のレシートを撮る、という形にしてしまうのが現実的です。
AXpress飲食では、レシートを撮影するとAIが日付・店名・金額・勘定科目の候補を読み取ります。読み取った内容は画面で確認・修正してから保存する形で、確定はご自身の操作で行います。
よくある質問
- Q. 簿記の知識がなくても飲食店の経理はできますか?
- A. 日々の記録を残すこと自体は、簿記の知識がなくてもできます。売上を日別に記録し、レシートを分類して残し、現金を定期的に合わせる、という3つを続けられれば、記帳や申告の段階で必要な材料は揃います。仕訳や決算の処理は税理士に依頼するか、会計ソフトの支援を使う形が一般的です。判断に迷う部分は無理に自分で決めず、税務署や顧問税理士に確認してください。
- Q. レシートはどこまで細かく分類すればよいですか?
- A. 最初は仕入(食材)・消耗品・水道光熱費・その他の4つ程度で十分です。細かく分けようとすると作業が止まり、結局続かなくなります。分類に迷うものは「その他」に入れて先に進み、月末や税理士とのやり取りのときにまとめて確認するほうが、記録が途切れず結果的に正確になります。慣れてきてから必要に応じて分類を増やしてください。
- Q. 現金が合わないときはどうすればよいですか?
- A. 多くの場合、店の現金から小口の買い物をした記録や、釣銭を補充した記録が抜けています。週に一度レジの現金を数えて記録と照らし合わせる習慣にしておくと、差が出たときにその週の中から原因を探せます。月単位で確認していると遡るのが難しくなるため、頻度を上げるほうが結果的に手間が少なくて済みます。どうしても合わない差額の処理方法は、顧問税理士にご確認ください。
- Q. 食材費と人件費の比率はどのくらいが適正ですか?
- A. 一般に60パーセント前後が目安として語られることが多いものの、適正な水準は業態によって変わります。原価をかけて単価を上げる業態と、回転数で稼ぐ業態では構造が違うため、他店の数字と単純に比較しても判断材料になりません。大切なのは、自店の数字を毎月同じ方法で計算し、その推移を見ることです。前月より上がっていれば原因を1つ絞って手を打つ、という使い方が現実的です。
- Q. 税理士に頼んでいれば自分で経理をしなくてもよいですか?
- A. 記帳や申告を依頼していても、日々の記録と資料の整理はお店側で行う必要があります。レシートが年間分まとめて袋に入っている状態だと、仕分けから始めることになり、その作業分が費用に反映されることもあります。月ごとにレシートがまとまっていること、売上が日別で残っていること、通帳と手元の記録が一致していること、この3つを整えておくと、やり取りの回数も費用も抑えやすくなります。
- Q. 会計ソフトと、経費や売上を記録するアプリは何が違いますか?
- A. 会計ソフトは帳簿づけから決算・確定申告までを行うためのもので、記録アプリは日々の経費や売上を記録して集計するためのものです。個人店では、日々の記録を手軽に残す部分でつまずくことが多いため、まず記録を続けられる形を作り、決算・申告は会計ソフトや税理士に任せるという分担が現実的です。記録したデータを会計ソフト用の形式で書き出せるかを確認しておくと、二重入力を避けられます。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としています。税務・労務の個別の判断については、税理士・社会保険労務士などの専門家にご確認ください。制度・数値は変更される場合があります。