飲食店の人件費率の目安|計算と下げ方の考え方
更新日 2026-09-08(公開日 2026-09-08)
人件費率は、飲食店の経営で食材費と並んで見られる数字です。ただ、計算式そのものは単純でも、人件費に何を入れるかで結果が大きく変わります。とくに個人店では、店主自身の取り分を含めるかどうかで数字が別物になります。この記事では、計算の仕方、含める範囲の決め方、一般に言われている目安が業態でどう変わるか、そして高いと感じたときにどこから確認すればよいかを整理します。なお、労働時間や賃金の個別の判断は社会保険労務士の領分であり、本記事は労務の相談や手続きの代行を行うものではありません。
人件費率の計算式は「人件費 ÷ 売上高」
人件費率は、その月の人件費をその月の売上高で割って求めます。式そのものは単純ですが、割り算である以上、分子の人件費が変わらなくても、分母の売上が落ちれば比率は上がります。比率だけを追っていると、売上が落ちた月に「人を使いすぎた」と誤って判断することがあります。
そのため、比率と金額の両方を並べて見てください。また、給与の締め日と売上の集計期間がずれていると、月ごとの比較になりません。一度決めた計算のやり方を途中で変えないことが、推移を読むうえでいちばん効きます。
- •計算式は「その月の人件費 ÷ その月の売上高」
- •売上が落ちた月は、人件費が同じでも比率は上がる
- •比率と金額の両方を並べて見る
- •給与の締め日と売上の集計期間をそろえる
- •計算のやり方を途中で変えない(推移が比較できなくなる)
人件費に何を入れるかで数字が変わる
支払った給与だけを人件費と考えていると、実際より低い数字が出ます。人に関わって店から出ていくお金は、給与のほかにも社会保険料の会社負担分、通勤費、まかないにかかる材料費、求人にかけた費用など幅があります。どこまで含めるかで、比率は数ポイント動きます。
含める範囲に唯一の正解はありません。大切なのは、範囲を決めたら毎月同じ範囲で計算し続けることです。なお、まかないや通勤費を税務上どの費用として扱うかは判断が必要になるため、顧問税理士か所轄の税務署にご確認ください。
- •アルバイト・パートの給与
- •社会保険料の会社負担分
- •通勤費
- •まかないにかかる材料費
- •求人にかけた費用(毎月は出ないため別枠で持つ店もある)
- •税務上の取り扱いは顧問税理士か所轄の税務署に確認する
店主自身の取り分を入れるかどうかで数字は別物になる
個人店でいちばん数字が動くのがここです。店主が現場に立ちながら生活費を店から取っている場合、その分を人件費に含めるかどうかで、比率は十数ポイント変わることもあります。他店の数字と比べて低い・高いと感じたときは、まず相手がどちらの計算をしているかを疑ってください。
含めない計算は比率が低く出て、他店と比べやすくなります。含める計算は、店主が現場を離れて人を雇う場合に何が起きるかが見えます。どちらを採ってもかまいませんが、途中で変えると推移が読めなくなります。家族に手伝ってもらっている分についても同じ論点があります。
- •含めない計算=比率は低く出る。他店の数字と比べやすい
- •含める計算=人を雇って回す場合の姿が見える
- •家族に手伝ってもらっている分も同じ論点になる
- •どちらを採るか決めて、毎月固定する
- •他店と比べるときは、相手の計算方法をそろえてから
- •個人事業の場合の税務上の取り扱いは顧問税理士に確認する
一般に言われている目安と、業態で変わること
人件費率は一般に3割前後が目安として語られることが多い数字です。ただしこれは平均的な話で、適正な水準は業態によって変わります。同じ売上でも、手数のかかる料理を出す店と、提供が速く回転で売上を作る店では、必要な人の量がそもそも違います。
たとえば居酒屋は調理と接客の手数が多く、比率が上がりやすい構造です。提供の速い麺類の業態は回転で売上を作れる分、下がりやすくなります。カフェは滞在時間が長く客単価が抑えめだと上がりやすい。深夜や早朝に営業する店は賃金の設定が昼と異なることがあり、同じ人数でも金額が変わります。賃金の具体的な取り扱いは労働基準監督署や社会保険労務士にご確認ください。
- •一般に言われている目安は3割前後(業態で変わる)
- •居酒屋:調理と接客の手数が多く、比率は上がりやすい
- •提供の速い麺類の業態:回転で売上を作れるため下がりやすい
- •カフェ:滞在が長く客単価が抑えめだと上がりやすい
- •深夜・早朝の営業がある店は、同じ人数でも金額が変わる
- •他店の数字をそのまま自店の目標にしない
FL比率として食材費と合わせて見る
人件費率だけを見て判断はできません。飲食店では、食材費と人件費を足して売上高で割ったFL比率という見方が広く使われます。一般に6割前後が目安として語られますが、これも業態で変わるため、他店との比較ではなく自店の推移で見るものです。
食材費と人件費は、片方を下げるともう片方が上がる関係になりがちです。仕込み済みの食材を増やせば人の手は減りますが食材費は上がります。自店で仕込めば食材費は下がりますが人件費は上がります。片方だけを見て動かすと、合計では悪くなることがあります。
- •FL比率=(食材費+人件費)÷ 売上高
- •一般に言われている目安は6割前後(業態で変わる)
- •仕込み済みの食材を増やす=人件費は下がり食材費は上がる
- •自店で仕込む=食材費は下がり人件費は上がる
- •片方だけで判断せず、合計と利益で見る
人時売上高という見方
比率は売上の増減に振り回されます。それとは別に、1人が1時間働いていくらの売上を作ったかを見る指標が人時売上高です。売上高を総労働時間で割って求めます。金額ではなく時間で割るため、時給の違いに左右されず、店の回り方そのものが見えます。
月の合計だけでなく、曜日別や時間帯別で出すと差がはっきりします。数字が低い時間帯は、人が多いのか、そもそも客が少ないのか、原因が別です。低いからすぐ人を減らすのではなく、まず何が起きているかを確認する材料として使ってください。
- •人時売上高=売上高 ÷ 総労働時間
- •時給の違いに影響されないので、店の回り方が見える
- •曜日別・時間帯別で出すと、どこに差があるかが見える
- •人件費率と併せて見ると、原因の当たりがつけやすい
- •低い時間帯は原因を確認する材料にする(すぐに動かさない)
人件費率が高いときに確認する順番
高いと感じたら、まず分子と分母のどちらが動いたのかを分けます。前月と比べて人件費が増えたのか、売上が落ちたのか。ここを分けないまま人の配置の話に進むと、売上が落ちただけの月にシフトを触ることになり、次の月にさらに売上を落とします。
人件費の側が動いているなら、時間帯ごとの売上と、その時間に何人立っていたかを並べます。感覚ではなく記録で見るのがこの段階です。新しく入った人がいる月は、教える側の時間も乗るため、一時的なものとして分けて見てください。
- •分子(人件費)と分母(売上)のどちらが動いたかを先に分ける
- •時間帯ごとの売上と、その時間の人数を並べて見る
- •予約が集中する日と、そうでない日を分けて見る
- •新人が入った月は教える側の時間も乗る(一時的な要因)
- •原因の候補を1つに絞り、翌月に結果を見る
仕込みと、開店前後の時間を測る
個人店で見落とされやすいのが、営業時間の外にある時間です。開店前の仕込み、発注、清掃、閉店後のレジ締めや翌日の準備。ここは売上が立っていない時間なので、かかった分がそのまま人件費率に乗ります。営業中だけを見ていると、この部分が視界から外れます。
先にやるのは減らすことではなく、どれだけかかっているかを測ることです。測ってみると、仕込みの手順や発注の頻度、事務作業の進め方など、接客や料理の質を落とさずに変えられる場所が見えてきます。順番を逆にすると、削れるところが分からないまま人だけが減ります。
- •開店前:仕込み・発注・清掃・釣銭の準備
- •閉店後:レジ締め・清掃・翌日の準備・記録の入力
- •売上の立たない時間なので、そのまま比率に乗る
- •まず「どれだけかかっているか」を測る(減らす話はその後)
- •レシートの整理や売上の記録といった事務も同じ枠で見る
下げるときにやってはいけないこと
人件費率は人を減らせば下がります。ただし、下がった比率が良い状態を意味するとは限りません。人が足りずに提供が遅れたり、接客に手が回らなくなれば、満足度が下がって再来店が減ります。売上が落ちれば比率はまた上がるので、元より悪い状態に戻ります。
もう1つは定着です。無理のある運用が続くと辞める人が出て、求人と教育に時間と費用がかかります。目に見えにくいコストほど後から効きます。なお、労働時間・休憩・賃金の具体的な取り扱いには法律の定めがあり、個別の判断は労働基準監督署や社会保険労務士にご確認ください。
- •人を減らせば比率は下がるが、売上が落ちれば結局戻る
- •提供の遅れや接客の質は、再来店に効いてくる
- •辞める人が出ると、求人と教育の時間と費用が新たに発生する
- •一度に複数を変えると、何が効いたのか分からなくなる
- •労働時間・休憩・賃金の個別の判断は労働基準監督署や社会保険労務士へ
毎月同じ方法で出し続ける仕組みにする
ここまでの話は、毎月同じ方法で数字が出ていることが前提です。月末に思い出したように一度だけ計算しても、その月はもう終わっています。売上と食材費と人件費が同じ場所に集まっていて、月の途中でも見られる形にしておくと、手を打てるうちに気づけます。
AXpress飲食では、売上の記録とレシートの撮影を続けると、食材費と人件費の比率、原価率、客単価が自動で集計されます。人件費は確定したシフトから積み上がります。AIがシフトの下書きを人件費から逆算して作りますが、下書きであり確定はご自身の操作です。給与計算の機能はありません。
- •計算方法を決めて毎月固定する(途中で変えない)
- •月末に一度ではなく、月の途中で見られる形にする
- •売上・食材費・人件費が同じ場所に集まっていること
- •AXpress飲食は売上とレシートからFL原価・原価率・客単価を自動集計する
- •AIシフトの下書きと予約管理はスタンダード以上のプランの機能
- •給与計算は行わない。会計ソフトへ渡すCSVの書き出しに対応
よくある質問
- Q. 飲食店の人件費率はどのくらいが目安ですか?
- A. 一般に3割前後が目安として語られることが多い数字ですが、適正な水準は業態によって変わります。手数のかかる料理を出す店と、提供が速く回転で売上を作る店では、必要な人の量がそもそも違うためです。また、店主自身の取り分を含めて計算しているかどうかでも数字は大きく動きます。他店の数字をそのまま目標にせず、自店の数字を毎月同じ方法で計算し、その推移を見ることをおすすめします。
- Q. 人件費にはどこまで含めればよいですか?
- A. 支払った給与のほかに、社会保険料の会社負担分、通勤費、まかないにかかる材料費、求人にかけた費用などが候補になります。どこまで含めるかに唯一の正解はなく、範囲を決めたら毎月同じ範囲で計算し続けることのほうが大切です。範囲を途中で変えると、前の月と比べても意味のない数字になります。なお、まかないや通勤費を税務上どの費用として扱うかは判断が必要になるため、顧問税理士か所轄の税務署にご確認ください。
- Q. 店主自身の取り分は人件費に入れますか?
- A. 考え方が分かれる部分で、含めるかどうかで比率は十数ポイント変わることもあります。含めない計算は比率が低く出るため他店と比べやすく、含める計算は店主が現場を離れて人を雇う場合に何が起きるかが見えます。家族に手伝ってもらっている分についても同じ論点があります。どちらを採ってもかまいませんが、途中で変えると推移が読めなくなるため、方針を決めたら固定してください。
- Q. 人件費率が高いとき、まず何をすればよいですか?
- A. 人件費が増えたのか、売上が落ちたのかを先に分けてください。ここを分けないままシフトの話に進むと、売上が落ちただけの月に人を減らすことになり、次の月にさらに売上を落とします。人件費の側が動いているなら、時間帯ごとの売上と、その時間に立っていた人数を並べ、感覚ではなく記録で確認するのが次の一歩です。開店前の仕込みや閉店後の作業にかかっている時間も、あわせて測っておくと原因を絞りやすくなります。
- Q. 人時売上高はどう使えばよいですか?
- A. 売上高を総労働時間で割った数字で、1人が1時間働いていくらの売上を作ったかを表します。金額ではなく時間で割るため、時給の違いに左右されず、店の回り方そのものが見えます。曜日別や時間帯別で出すと差がはっきりします。ただし、数字が低い時間帯は人が多いのか客が少ないのかで原因が別なので、すぐに動かすのではなく、何が起きているかを確認する材料として使ってください。
- Q. AXpress飲食で人件費の計算までできますか?
- A. 確定したシフトから人件費が集計され、売上と食材費と合わせてFL原価や原価率、客単価が自動で計算されます。レシートを撮ると勘定科目と税区分の候補が作られ、確定はご自身の操作で行います。AIはシフトの下書きも人件費から逆算して作りますが、これもあくまで下書きです。給与計算そのものの機能はありません。なお、予約管理とAIシフトはスタンダード以上のプランの機能です。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としています。税務・労務の個別の判断については、税理士・社会保険労務士などの専門家にご確認ください。制度・数値は変更される場合があります。